2019年、Doechiiはフロリダのタンパにある自分の寝室で、不安についての正直な歌を録音した。世界がそれを本当に聴くまで、6年の歳月が必要だった。

寝室で生まれた一曲
本名Jaylah Ji'mya Hickmon、1998年8月14日フロリダ州タンパ生まれのDoechiiは、バレエ、タップダンス、体操、演技、合唱など多彩な舞台芸術に親しんで育った。プロの合唱歌手を夢見ていたが、友人に促されてインディーズアーティストに転向。2019年、自宅の寝室でミックステープ「Coven Music Sessions」を自主録音し、その中の一曲が「Anxiety」だった。
この曲はGotye & Kimbraの2011年の世界的ヒット「Somebody That I Used to Know」のギターラインをサンプリングしている。さらに興味深いのは、Gotyeの原曲自体がブラジルのギタリストLuiz Bonfáの1967年曲「Seville」をサンプリングしていること。つまり「Anxiety」はサンプルのサンプルという三世代の音楽的再解釈なのだ。
6年後のTikTok爆発
2023年、ラッパーのSleepy HallowがDoechiiの「Anxiety」コーラスを自身のアルバム「Boy Meets World」に収録し、これが原曲への注目を集めるきっかけとなった。2025年初頭、オリジナルデモがTikTokで爆発的にバイラルし、数百万人が聴き始めた。ファンの熱望に応え、2025年3月4日に再録音された公式バージョンがストリーミング配信された。

反響は絶大だった。「Anxiety」はビルボードホット100で9位を記録し、Doechiiの米国初トップ10シングルとなった。海外ではオーストラリア、ニュージーランド、ギリシャ、ラトビア、スイスで1位を獲得。英国、ドイツ、フランス、アイルランド、ノルウェーなどでもトップ10入りを果たした。
"ただ自分の気持ちを正直に寝室で録音しただけ。6年後に世界のチャートに入るなんて、想像もしていなかった。"— Doechii、曲の予期せぬ旅について
同じ2025年、Doechiiは第67回グラミー賞でミックステープ「Alligator Bites Never Heal」によりベスト・ラップ・アルバム賞を受賞。Lauryn Hill、Cardi Bに次いでこの部門を受賞した3人目の黒人女性となった。

不安を芸術に昇華する
「Anxiety」の力はその生の正直さにある。Doechiiは脆弱性を隠さず、そのまま言葉にした。TikTokが真正性を最も高く評価する時代に、6年前の寝室録音がアルゴリズムで最適化されたコンテンツの波を越えて人々の心に届いた。不安は誰でも持っている、不完全さにも自分の言葉がある——そのメッセージが彼女を一時的なトレンドではなく、世代の声にした。