アルバムの提出期限まで残り24時間となった夜、マルーン5はすでに完成していた全曲を棚上げし、新しい曲を急いでレコーディングした。その大胆な決断が、ビルボードHot 100で7週連続1位を記録し、RIAAダイヤモンド認定を受けた伝説的ヒット曲Girls Like Youを生み出した。

締め切り24時間前に生まれた奇跡
2017年、マルーン5の6thアルバムRed Pill Bluesはすべての収録曲が完成し、レーベルへの提出準備が整っていた。締め切りは日曜日で、土曜の夜にはトラックリストも確定していた。そこへ、プロデューサーのJ Kashの電話が鳴った。
かけてきたのはシンガーソングライター・スタラー(Starrah)のマネージャーで、一晩でデモを書き上げたという連絡だった。J Kashはデモを聴いた瞬間にヒットを確信し、すぐにアダム・レヴィーンを説得した。問題は締め切りまで24時間も残っていなかったことだ。
その緊迫した時間の中で、アダムは何百回もボーカルを収録し、完璧な感情表現を追い求めた。まさかこの土壇場の一曲が、ビルボードHot 100トップ10に最も長くランクインした楽曲の一つになるとは、誰も想像していなかった。
"アルバムはもう完成していた。でも土曜の夜にスタラーのデモを聴いた瞬間、これは絶対に入れなければならないと確信した。"— J Kash, プロデューサー

カーディ・Bと#MeTooの交差点
2018年5月31日、マルーン5はラッパーのカーディ・Bをフィーチャーした新バージョンをリリースした。ソニー/ATVのアーバン部門責任者、ショーン・ホリデーは「この曲がリリースされたのは#MeToo運動の真っ只中だった。だからこそ、女性の声が必要だと思った」と語っている。
カーディ・Bが持つニューヨーク独特の生々しいエネルギーが加わることで、曲は単純な男性の愛の告白から、女性が自らのアイデンティティを宣言する力強いメッセージへと生まれ変わった。

記録を塗り替えたチャートとアイコニックなMV
ウェディング・クラッシャーズで知られるデイヴィッド・ドブキン監督が手がけたミュージックビデオには、サラ・シルバーマン、リタ・オーラ、ミリー・ボビー・ブラウン、エレン・デジェネレスら25人が出演。アダムの妻ベハティ・プリンスルーと娘ダスティ・ローズも登場した。このMVはYouTubeで30億回以上再生されている。
チャートでの快進撃も止まらなかった。ビルボードのアダルトコンテンポラリーチャートで36週連続1位という当時の最長記録を樹立。Hot 100でもエド・シーランの「Shape of You」に並ぶトップ10最長滞在記録(33週)を達成した。2021年にはRIAAのダイヤモンド認定を受け、カーディ・Bは女性ラッパー初のダイヤモンド2冠を達成した。
土曜の夜の電話が残した遺産
土壇場の賭け、#MeToo時代に響いたメッセージ、そして歴史を塗り替えたチャート記録。Girls Like Youは単なるポップバラードではない。2019年のスーパーボウルLIIIのハーフタイムショーでこの曲が響き渡ったとき、そのすべてが一本の電話から始まったと知る人は少なかった。